からす17

それからもオレは紳士と時間を過ごしていた

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紳士は沢山の話をしてくれた

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奥さんに先立たれ一人暮らしをしていること

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それが講じて料理や菓子創りを愉しんでいること

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画家は勿論...即興でピアノを演奏していること

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そのオリジナルの曲に歌詞をつけたりしていること

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あとは...

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趣味の散歩でゴミ拾いをしていることや...

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街のヤクショと連携して月に一度ボランティアで市民の悩み相談に乗っていること

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更には...

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二週に一度の金曜日にラジオDJとして30分の生放送番組を受け持っていること

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すごいヒトだなぁと... 

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オレはただただ圧倒されていた

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そして紳士は数冊のスケッチブックをオレに向け見開いてくれた

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人物、風景、建造物、そして猫など...

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そこには沢山の絵があった

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《カラスくん...あなたは芸術に興味があるようだね...もしあなたが人間だったら素晴らしいアーティストになると感じる...わたしのように...なんてね》

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そう話している時に雲行きが怪しくなってきて...

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《おっ!カラスくん...互いに風邪を引いたら大変だ...今日は本当にありがとう!ジジイの話を聴いてもらって感謝だ》

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そして紳士は立ち去ろうとしたんだけど...

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その時ポケットから何かが落ちて...

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近くで見てみるとアトリエの地図が書いてある名刺だった

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オレはそれをくわえて急いで紳士の元へ...

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《ん?カラスくん!どうかした...あぁ!わたしの名刺だ!わざわざありがとう...ゴミ拾いをしているのにこんなことしていたらいけないな...氣を付けないとね》

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そして紳士はベレー帽を一瞬だけ取って帰っていった

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その紳士の後ろ姿を見ながら...

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こんな生き方が人間になると出来るんだ...と

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でも紳士のようにボランティア活動と併せて仕事をするなんて...

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カラスながらに大変なことだなぁって感じながら前グループの元へ帰って行った

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だけど相変わらず仲間たちはオレに対して冷たくて...

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これからどうしたら良いのかなって思いながら...

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フト紳士のアトリエの地図を思い出した

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迷惑が掛からないように近くの電線まで行ってみることにした

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そして辿り着いたら...

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沢山のヒトたちがギャラリーに来ていた

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そのアトリエの正面玄関前には...

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オレの絵が展示されていた

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まさかそんな目立つところに展示してくれていたなんて思いもよらなくて...

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すごく嬉しかった

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そして紳士が帰るヒトたちに笑顔で挨拶している姿が見えた

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紳士は変わらずベレー帽を被っていて元氣そうだった

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その姿を見てオレは満足して帰ろうとした瞬間...

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《あっ!もしかしてカラスくんかい?あの時は本当にありがとう!あなたをギャラリーにご案内することが出来ず残念だが...お陰様で大盛況なんだ!そしてカラスくん!あなたの絵をポストカードとして挨拶にとお客様がたにお配りしているんだが[めっちゃカッコいい][イケメンなカラスでカラスのイメージが変わった]などというお声をいただいている...カラスくん!あなたは大丈夫!自身の声に従って行動するといい...きっと新しい路が開ける...おっ!お客様が...カラスくん!それじゃあ》

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紳士はヒトの往来を氣にせず...

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オレに大きな声で...

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そう話しかけてくれた

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自身の声に従って新しい路を開く

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その言葉に勇氣付けられたオレは...

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前グループから立ち去ることを決めた

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紳士のアトリエのそばに行くことは出来なくなっても...

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紳士はオレに沢山の大切なことを教えてくれた

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だから...

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その言葉を信じて...

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その日に新しい路を切り開いた

 

 

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