からす16

...お待たせ

あぁ...

それじゃあ案内するね

一体どんな部屋なんだ?

...

見当がつかないな...ん?

どうぞ...

ありがとう...それじゃあ

...

ヨイショ...おっ!

...

...この道具

...

そうだ...

...

あのヒトが持っていた

...

カラスのオレをデッサンしてくれた...

...

ベレー帽の紳士が

...

スケッチブックと...

...

鉛筆と消しゴム

...

...あの時

...

公園で前のグループと仲違いしてしまった後...

...

オレはポツンと芝生の上で佇んでいた

...

人間に対して余計なことしてしまったが故にグループから仲間外れにされてしまったこと...

...

どうしてこんなことしてしまったんだろう?

...

ずっとグルグル考えていた

...

そんな時...

...

《カリ...カリ》と風の音とともに聴こえてきた

...

何の音だろう?と振り返ると...

...

《あぁ...カラスくん!あなたの許可も取らずにデッサンさせてもらっていることを詫びる...でももう少し動かずに居てもらえないだろうか》

...

オレは何だ?と思いながらも...

...

紳士が真剣にデッサンしようとする姿を見て...

...

前の体勢に戻った

...

《ありがとう!あなたは人間の言葉が分かるのかな?申し訳ないがそのままでおねがいする》

...

そのまましばらく佇んでいると...

...

何だか不思議と心が落ち着いて来た

...

賑やかな家族連れの声...

...

風に乗ってくる...

...

デッサンの音

...

不思議な感覚だった

...

そして...

...

《あぁカラスくん!本当ありがとう!カラスくんと言ってしまっているがあなたはトノガタなのかな?レディであるなら心から詫びる》

...

それを聴いてオレはトノガタだという意味をこめて《カァー!》と大きく鳴いた

...

そうしたら...

...

《わたしの見立ては間違っていなかったようだ...カラスくん!あなたの凛々しい立ち振る舞いは人間でも中々出来ない...素晴らしいトノガタと出会えて光栄だ》

...

そして紳士は完成したデッサンをオレに見せてくれた

...

《カラスくん!いかがなものだろうか?わたしは一応画家として活動しているのだが》

...

オレはその絵を見て...

...

驚いた

...

見たことの無いオレが居る

...

こんな絵を描けるなんて...

...

オレがじっと絵を見ていると...

...

《カラスくん...これがあなたの本当の姿なんだよ》

...

そして紳士はさらに...

...

《実はさっき見ていたんだ...あなたが風で飛ばされた弁当箱の蓋を取りに行って少女に返したものの親がキツい物言いをしていたこと...そしてカラスたちのところへ戻ったあなたが仲間にガーガーと言われていたこと...あなたはただ親切心から行動しただけなのに...大変だったね》

...

紳士は更に続けて...

...

《カラスくん...わたしにはあなたをデッサンすることでしか励ますことが出来ないが...絵を真剣に見てくれたあなたを見て少しホッとしたよ》

...

...オレは紳士に向けありがとうの意味を込めて鳴いた

...

《良かった...ところでカラスくん!近日わたしのアトリエで展示会があるのだが...この絵をギャラリースペースに展示させていただきたいのだが良いだろうか》

...

不思議だった

...

なぜ紳士はこんなにもオレに話しかけてくるのか...

...

はたから見れば《変わった人間がカラスに話しかけている》と見られてもおかしくない

...

だけど紳士はオレがカラスではなく人間として接してくれている

...

そのことを強く感じた

 

 

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